(岐阜ラジオ(AM1431)の番組「岐阜医師会ラジオホームドクター」 平成18年12月14日放送)

俗に鼻血と呼ばれる鼻出血はいろいろな原因で起こります。一番多いのは単純性鼻出血で全体の8割にみられるものです。これは、鼻を強くかんだり、鼻をほじって傷をつけたりなど、鼻の粘膜を刺激して起きます。鼻の入り口付近1~2cmの「キーゼルバッハ」からの出血です。ここは毛細血管が集合しており、粘膜も薄いため出血しやすいのです。

子供さんの鼻出血はほとんどがこれにあたいし、座って指で鼻をつまんで圧迫していただくと5分ほどで止まります。鼻にティッシュを詰め込むことは、傷をひろげることもあり、おすすめしません。また、鼻出血を繰り返す子供さんはアレルギー性鼻炎や蓄膿症を合併していますので要注意です。

鼻がムズムズしたり、詰まって苦しいと、どうしてもいじりますので、「鼻を治して~」というサインだと思ってください。

次に動脈性出血があります。中高年で特に高血圧の人に多くみられます。鼻腔の後ろの方にある「蝶口蓋動脈」など、太い血管が動脈硬化で血管壁がもろくなり起こります。出血は激しく、鼻からだけでなく、口からもあふれるほど大量に出ます。この場合はタクシーや救急車で一刻も早く医療機関に受診してください。私どものクリニックにも、年に何人かがタオルで真っ赤にして来られます。出血している血管を見つけ、レーザーや電気メスで焼灼します。なかにはそれでも止血せず、入院施設のある病院に行っていただくこともあります。

高齢化社会になり、近年、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の治療薬である「抗凝固薬」を服用されてみえる方が多くみられます。血液をサラサラにして血栓をつくらないようにする大事なお薬ですが、鼻出血は止まりにくくなります。たいてい大出血を起こす前に、予兆として、小出血を繰り返しているようです。この時点で近くの耳鼻科で止血処置を行っておけば、大変な思いをしなくてもよいケースも多くありますので、早めの受診をおすすめいたします。